国際法勉強会
Jessica Howley
書籍情報, 国家責任, 人権
2024年7月25日
本書は,国と個人の双方が同一の被申立国に対して国際法違反の賠償を請求することができるような,重複請求に関するものである。より詳細には,国家責任法に基づき,国または個人の一方による行為が,他方から提起される重複請求を妨げうるかいなか,またいかにしてそれがなされるのかを検討する。
本書ではまず,このような重複する請求が従来提起されてきたし,今後も提起されうることを概説する。次いで,これら主体のうちの一方の行為が,他方の請求を排除するという規則を生じさせる可能性があるかを検討する。
まず,パートB(Ⅲ-Ⅶ章)では,こうした重複する請求の一報を排除するために機能しうる多くの排除規則として,国内救済規則,重複請求を規定する条約条規,放棄,既判力および同様の効果を持つ条約条規,そして二重回収を検討する。ここでは,国または個人の行為が,これらの規則のもとで,他方による重複する請求を排除するような状況が多く存在することを強調している。
第2に,パートC(Ⅷ章)では,不法行為を排除する状況を取り上げている。対抗措置と自衛に焦点をあてて,国または個人の行為が,そのような事情の作用の結果として,当該主体の請求のみならず,他方に帰属する重複した請求をも排除する効果を持つのかを検討する。とりわけ近年の実行に鑑みて,本書では,これらの規則がそのように作用する余地は大きいと結論付けている。
本書は,国家責任法のもとで,国または個人による行為が,他方によって提起される重複請求を排除する可能性があるのは如何なる場合であるかを明らかにすることによって,ILCによる国家責任法の最近の法典化によってこの点に残されたギャップを小さくし,これから,国と個人の双方をより安定的な立場へと置くことを目的としている。
https://ora.ox.ac.uk/objects/uuid:443aef9f-9860-406b-8357-347724047970