国際法勉強会
文献情報(2024年)
2024年12月30日
国際法と分野間の境界の重要性(International Law and the Significance of Disciplinary Boundaries)
Ulf Linderfalk, Eric De Brabandere
書籍情報, 国際法一般
過去30年ほどの間に,国際法と法実務はますます専門化し,多様化してきた。 このような発展は「特別レジーム(special regimes)」と呼ばれるような,ますます多様化する法実務を伴うものである。 本書は,国際法のさまざまな分野の専門家が,なぜ同じようなことを異なるやり方で行うのかを説明するために,特別レジームという概念についての新たな理解を提案する。 本書は,Etienne Wengerの「実践の共同体」理論の意味において,特別レジームは実践の共同体として考えるのが最適であると主張する。 本書では,実践共同体の理論が国際法の文脈と特 別レジームの概念にどのように翻訳されるかを探求している。 著者らは共同体の構成員の行動に焦点を当て,その理論を調査するための革新的な方法論を構築し,この方法を選択したケーススタディに適用することで,国際法における特別レジームの理解に独創的なアプローチを提供している。
2024 年12月17日
国際犯罪を立証する(Proving International Crimes)
Yvonne McDermott
本書は,ジェノサイド,戦争犯罪,人道に対する罪などの国際犯罪を立証するという超大かつ複雑な課題に,国際刑事裁判がどのように取り組んできたかを解明する。 これらの犯罪の規模および範囲,そしてその実行と訴追の間の時間的・空間的距離がもたらす課題はよく知られている。 それにもかかわらず,捜査官,法律家,学者,政策立案者は,国際犯罪を立証するための証拠の収集,保存,提示,分析においてどのような基準を充足する必要があるのかを確立するために,しばしば国際刑事裁判の法律と実務に注目する。 本書は,これまでの国際刑事裁判所や国際刑事裁判における証拠に関する法律と実践を包括的に説明するとともに,今後の実践に向けた提言を提供することで,今後の犯罪に関する国内的,地域的,国際的なアカウンタびりティ・プロセスへと情報を提供することを目的としている。
本書は,国際刑事裁判所および法廷の法的・手続的枠組みに組み込まれた柔軟性により,国際刑事証拠法はしばしば予測不可能で不確実であることを示す。 このため,著者は,「判断の正しさrectitude of decision」と「最高水準の公正さhighest standards of fairness」という2つの指導原則に基づく首尾一貫した認識論的枠組みの構築を主張している。
リンク:https://global.oup.com/academic/product/proving-international-crimes-9780198842972
2024年12月16日
国際人権裁判所の法と政治
Alec Stone Sweet, Wayne Sandholtz
書籍情報, 人権, 紛争解決
法学と社会科学の視点を組み合わせた本書は,6つの地域の人権裁判所の起源と発展について解説している。 いずれの裁判所においても,裁判官は,体制を失敗作へと追い込む恐れのある政治的勢力や法的障害を克服しようと努めた。 本書で著者らは,マルチレベルの「国境を越えた司法制度」の中で,権利保護の水準を高めるための闘いに焦点を当てている。 トランスナショナルな司法制度とは,権利憲章,憲章の執行を任務とする裁判所,権利が侵害されたと主張して裁判所に申し立てる個人の権利,という3つの要素から構成される。本書は,拷問,非人道的な扱い,非差別,適正手続き,司法へのアクセス,表現の自由,私生活と家族,その他の自由など,多様な分野におけるこのような制度の法と政治を分析している。 国の公務員が権利保護の実効性を高めることを強く支持している場合もある。 また,裁判所の活動が大きな政治的「反発」を生み,国家当局者が裁判所の権限を抑制する行動をとったり,政権から完全に退場したりする場合もある。 本書はこうした試みについて説明し,評価するものであるが,その結果はまちまちであり,裁判所を抑制する運動のほとんどは失敗に終わっている。
https://global.oup.com/academic/product/the-law-and-politics-of-international-human-rights-courts-9780198922216
2024年12月12日
国際法における政府承認(Recognition of States in International Law)
Pavle Kilibarda
書籍情報, 国家
国家承認は国際関係においてよく見られ,国際法の議論においても中心的な位置を占めているが,その性質と法的効果については21世紀に入っても論争が続いている。 国家承認が国家の誕生において基本的な役割を果たすと考える者がいる一方で,承認に法的価値があることを否定する論者もいる。 いずれにせよ,国権が争われるいかなる事案をめぐる議論も,遅かれ早かれ,他国による承認,あるいはその欠如の問題に転じることになる。
本書は,国際法の主体であり原初的な存在である国家の創設において,国家性を絶対的あるいは経験的事実empirical factとし,承認を単に宣言的なものとする広範な見解に異議を唱えるものである。 パレスチナ,コソボをはじめとして,ソマリランド,ウクライナ東部まで,様々な紛争国家の比較分析に基づき,様々な状況における承認行為の規範的価値と効果を,国際法の適用規則から国家性が推論される場合,承認によってのみ国家性が説明される場合,国際法規範によって国家の樹立が阻止される場合を区別して確認しようとするものである。 本書は,承認に関連するさまざまな問題を論じるだけでなく,承認の歴史,各国政府の立場,国内外の法理を幅広く批判的にまとめた最新の概説書である。
https://global.oup.com/academic/product/recognition-of-states-in-international-law-9780198905653
2024年12月11日
裁定の帝国:米国の拡大と国際法の転換(Arbitrating Empire)
Allison Powers
書籍情報, 紛争解決, 歴史
本書は,グローバル・パワーとしての米国の出現に関する新たな歴史を提示する。それは,米国政府を国際的な法的監視から隔離しようとする試みと同様に,世界中に影響力を及ぼそうとする努力によって形作られたものである。 本書は,米国,メキシコ,パナマ,英国における広範なアーカイブ調査をもとに,1870年代から1930年代にかけて,米国の領土で権利を奪われた何千人もの住民が,生命と財産に対する国際的な法的保護に違反するとして米国を告訴するために国際請求権委員会に請求を行った経緯をたどっている。
著者は,そこでの予期せぬ請求の結果に注目することで,植民地化された臣民,奴隷制度からの難民,移民労働者たちが,アメリカ帝国による介入の合法性を立証するために設けられた一連の法廷を,米国による植民地統治の正当性に異議を唱える場へと変化させたことを実証している。 国際法の最初の社会史のひとつである本書は,20世紀半ばの国際秩序を再構築することになる主権と国家責任の意味をめぐる争いが,外交会議の場だけでなく,アリゾナの銅山,テキサスの綿花畑,サモアの港湾都市,キューバの砂糖プランテーション,パナマ運河の閘門や停車場でも繰り広げられたことを論じている。
本書は,米国が世界帝国になりつつあった数十年間,一般市民が国際法を用いて,国家による暴力の責任をどのように追及したかを明らかにし,彼らの主張を黙殺とした国務省の試みが,なぜ今日まで米国政府の責任を回避し続ける形で国際法を変容させたのかを実証している。
https://global.oup.com/academic/product/arbitrating-empire-9780190093006
2024年12月5日
国際投資仲裁における仲裁判断(The Award in International Investment Arbitration)
Katia Fach Gómez, Catharine Titi (eds.)
書籍情報, 投資, 紛争解決
本書は,国際投資仲裁における仲裁判断に関する包括的な研究書であり,実務家と学者の双方にとって有用な,国際投資仲裁判断に関する特異な参考文献であり,権威ある随一の文献である。 本書は,仲裁判断の起草からそれを支配する手続原則まで,仲裁審議と法廷力学から仲裁判断後の課題まで,意思決定におけるジェンダーの役割から法廷書記官の影響まで,仲裁判断を包括的に検討する。 複雑な紛争における事実認定,専門家の役割,法的推論と説得など,実践的なトピックを厳選し,実務家のニーズに重点を置いている。 現代的な課題に敏感な本書は,時代とともに発展してきた既存の問題だけでなく,裁定の起草におけるテクノロジーの影響など,まだ十分に注目されていない斬新なトピックも取り上げている。
本書は,現代の投資仲裁シーンにおける大物仲裁人,学界および国際的な法律実務の専門家というユニークな顔ぶれを一堂に集めることで,このテーマに関する知識と経験を,多様な角度や視点から引き出した唯一無二の知識を提供する。
https://global.oup.com/academic/product/the-award-in-international-investment-arbitration-9780192872968